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第8回 未生流傳書三才の巻 《陰陽消長・性気》

未生流東重甫

2024年10月のコラム


昨年最高を記録したばかりの平均温度を今年も更新し、統計観測開始以降で一番気温が上がったと聞いています。日頃涼しいところで過ごしている方々も人ごとでは済まされないくらいの酷暑が続いています。今年は適度の恵みの雨を望むことも難しい様です。


とはいえ、秋を迎えるにあたり、心騒ぐ思いは私だけでしょうか?

さて今月は伝書三才の巻「序説」の注釈の最後の説文になります。


  1. 陰陽消長

伝書草木養の巻に、「一年陰陽消長は子の月太陰にして、一陽来復あるは是冬至なり。…(中略)…戌の九月陰弥々盛んにして亥の十月陰中陽となる。子の月より午の月までを陽の一廻り午の月より子の月迄を陰の一廻りという。如斯陰陽消長して一歳を経る。」又一日にとりても同様に説明があります様に、一年の周期において又一日の周期においても陰陽消長の一廻りがあります。


「植物に大切な水火寒暖の消長が無ければ性気を通わすことは無い。」(


と説明されています。次の一節にはこの理(ことわり)陰陽消長そのものについて次のように説かれています。


性気さかんなる時は暖となりて動く此の動くものを陽となづく、性気静なる時は寒と成て動かず此の動かぬものをさして陰となづく、暖きわまる時は則寒のきざしをふくみて動かずこれを陽中陰とし、寒きわまる時は則暖のきざしを含みて動くこれを陰中陽とす、暖長じて未だ寒を含まざるを陽中陽とし、寒長じていまだ暖を含まざるを陰中陰とす。一切形あるもの暖外より暖むこれを少陽とし、又形あるもの寒外より冷やすこれを少陰とす、萬物皆ここに栄えここにおとろへて陰陽寒暖に應ぜぬものなし



華道玄解、伝書管見他五行に関してのいろんな著書に解りやすく陰陽消長の図が記されています。

陰陽と十干、陰陽消長と時節・時との結びつきを考えると、陰陽説では表と裏が相和して形を成す。また、陰陽の捉え方で考えるに陰陽消長は陰陽説を知りそれを時の移り行く中でなされる陰陽の増減・考え方が説かれています。自然の中で、自然と相和して生きる草木の姿に天の恵み・地の徳を今さらながら感じます。


  1. 性気

自然の恵みを受け生育した草木に陰陽消長の道理を弁え、私心を忘れ水揚げし、養いを施し活かされることです。性気が通って初めて供花・饗花にも遣うことができるものです。


さて、今月のコラムにて“「序説」注釈”の説文が終了しましたので来月からは伝書本文に進みます。

「伝書を読む」ときくと、難しいことのように感じる方も多いようですが、同じような文は室町時代には著されていました。この伝書三才の巻が始めて世に出たのが、「花術三才之巻」として文化15年(1818年)頃ではと言われています。200年もの間読み継がれてきたことを考えると、貴重な物ではなでしょうか。


言葉の解りにくさもあるかと思いますが、ほとんど現代文として読めるように改版が繰返され、今日に至っていますので抵抗なく文章を感じ取れるのではないでしょうか。どうぞお楽しみに!

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