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第7回 未生流傳書三才の巻 《法形・地形・心の風流》

未生流東重甫

2024年 9月のコラム


「伝書」と聞けば難しいと耳をふさぐ傾向にありますが、現在の未生流の伝書は読みやすく、珍しい漢字には読み仮名がふられて備考欄に説明もあります。言葉の意味を理解し、耳に慣れれば自然に心に入るものと思います。

今月も序説から理解しにくい言葉をいくつかご紹介します。


「法形」 

天円地方の和合によって形が調い、陰陽和合、虚実等分をもっぱらとして挿花するところに花矩が生ずるものであり、花姿を美しくすると同時に、挿花の大意がその花に含まれなくてはなりません。


「華道に於いて三才和合の真理を論ずるに、假に三才の格花を作り此の姿を以って万物和合の道理を示す。流祖は此の三才の花形を作るに禁忌二十八箇条を定む、是に依って和合の理をしめす。

是即ち当流の本旨にして、唯花型を作る為の目的にあらず、挿花の道に倚って人道を示さんが為の所以なり」(玄解より)


「地形」

天地和合により縦横勾弦の三角鱗を求め、その意を解し挿花の心を忘れず、陰陽和合・虚実等分を基に定められた挿花の姿を意味します。

天の姿として挿花に表すなら円相体(内用前留)、また地の形として挿花に表すなら方形体、そして天地和合から求められた三角鱗があります。天地を別に形取るところの地の形を指すわけではありません。

なお、方形体は、挿ける姿を現す言葉であり、天地と東西南北四方を表現するものです。この姿は、松竹梅と万年青の七五三の二種だけで、意味を考えすぎて無闇に形を挿けてもいけません。


「義あって花を生くれば いけはななり」(落帽堂曉山)


「心の風流」  

手なぐさみまたは家に飾るがために挿ける挿花ではなく、自分を見、人を見そして花との語らいの中で心の拠り所を求めるものです。


伝書三才の巻の花矩七十二ヶ條の中には次のとおり記されています。

「(一)その席も花(二)花台薄板も花(三)花器も花(四)花留も花(五)水も花(六)鋏も花(七)挿ける姿も花(八)挿ける草木は勿論花(九)心も花となるべきは願う処なり」

およそ花を愛し挿花を愛することは出来ても、心のゆとりを求め、又心のゆとりある生活の中で挿花に相まみえることは難しいものです。そのゆとりこそが心の風流を感じ得るものではないかと思います。


華道玄解「挿け方五通りの区別」として、教花・供花・饗花・楽花・愛花と記されていますが、簡単に要約すると以下のようになります。


教花:流規を従って人倫の道を教示為す

供花: 草木の性質を尊み、規則をあまり深く論ぜず

饗花:客の心意に応ずべき心得が肝要

楽花:己が精神と同化して兎も角花と我との同一躰なる意を知覚する

愛花:命数の短き花を暫くの命を保たしむる


いけ花の技術向上は常として、いけ花の精神を未生流門葉を初めいけ花に携わる人の一人々が考えて頂きたいものです。「咲く花だけの美を求めるだけでなく、凋落の花、常緑の葉にも美を求めるのは、感覚だけの美ではないだろう」(いけばなの文化史Ⅰ(角川書店)より引用)は花を愛でるにおいてとても大切だと感じる今日この頃です。

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