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  • 未生流東重甫

「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧37

2023年6月のコラム「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧37


初夏の草木が、思い思いに陽差しを楽しんでいる様な景色が、私の心を和ませてくれます。春を待ちきれず花を咲かせる椿、初春に静かに咲く梅、春の暖かさにつれ満開の花を咲かせる万作や山茱萸、そして何より古代から親しまれてきた美しさの代表の様な桜と、美しく咲く花は沢山ありますが、山の木々がこれほど楽しそうに見えるのは1年を通してこの時期が一番ではないでしょうか。

一回りも二回りも大きく成長を遂げた木々の愉しそうな姿に勝る程心和ませる物は他に見当たりません。自然からの贈り物を満喫し、感謝したく思います。毎年の様に暑さや寒さばかりが季節感であるかの様に、挨拶が交わされることに少し違和感を覚えます。もう少し自然との付き合いを楽しんで欲しいものです。


酔古堂剣掃(すいこどうけんそう又はすいこどうけんすい)の一節には次のように記されています。


“史を読むには訛字(かじ)に耐ふるを要す。正に山に登るには仄字(そくじ)に耐へ、 雪を踏むには危橋に耐へ、閑居には俗漢に耐へ、花を看るには悪酒に耐ふるが如くにして、此に方(まさ)に力を得ん。”(明代の清言書類のうち特に日本で広く読まれている「菜根譚」等の類書。)


花に向う気持ちもここまで来ると味わい深いものがあります。花や木々に向き合う時、好きや嫌いという前に花の心と話しをすることです。いけばなもやたら形に作るのが上手い下手という前に、花の思いを感じ表現したいものです。


さて、閲覧を続けて参りました「華道玄解」も、残り少なくなりました。読み進んでいくうちに、今の時代背景を考えると難しい言葉もありますが、現代のいけばな界では思いもよらない言葉が交錯する中でも、少しは何かを感じることが出来たのではないかと思います。本日は「規矩の巻参考資料」から『五音の起例』に進みます。


 “片假名五十音に自然の音性あり五音は則五十音の本原たり


五音の起例

アイウエオ 単音ト云フ 喉ヨリ単一ニ發ス清音……………音原…宮音

カキクケコ 熟音ト云フ 喉ヨリ牙ニフレテデル清濁音……音原…宮。角

サシスセソ 熟音ト云フ 舌ヨリ歯ニフレテデル清濁音……音原…商。角。微

タチツテト 熟音ト云フ 舌ヨリ發スル清濁音………………音原…微

ナニヌネノ 熟音ト云フ 舌ヨリ鼻ニフレテデル清音………音原…微宮 脾…臓

ハヒフヘホ 熟音ト云フ 喉ヨリ唇ニフレテデル半濁音……音原…宮  商…肺臓    人

マミムメモ 熟音ト云フ 唇ヨリ鼻ニフレテデル清音………音原…羽 角…肝臓  音原

ヤイユエヨ 熟音ト云フ 喉ヨリ歯ニフレテデル清音………音原…宮 微……心臓  類

ラリルレロ 熟音ト云フ 舌ヨリ發ス     清音………音原…羽  腎臓

ワヰユヱヲ 熟音ト云フ 喉ヨリ唇ニフレテデル清音………音原…商羽


是の如く五音より、五十音を生じ和合して發す、

ア行の五音を、母韻と謂ふ他各行の韻となる故に母韻といふ、また五音を發声する自ら、高低の調子備

はる是れを十二調子といふ、則ち十二律なり、十二律の調子を十二ヶ月に配し陰陽の位別る、則ち律呂なり律は陽の位、呂は陰の位なり


五音十二調子別る次第と名稱

宮音、十一月子律位 一越調子  また  黄鍾といふ  下調一

   十二月丑呂位 斷金調子      大呂といふ 二

商音、一月寅律位  平調調子      大簇といふ 三

   二月卯呂位  勝絶調子      夾鍾といふ    四

三月辰律位  下無調子      姑洗といふ    五

角音、四月巳呂位  雙調調子      仲呂といふ    六

   五月午律位  鳧鍾調子      蕤賓といふ    七

微音、六月字呂位  黄鍾調子  また  林鍾といふ    八

   七月申律位  鸞鏡調子  また  夷則といふ    八(九では?)

羽音、八月酉呂位  盤渉調子  また  南呂といふ    十

   九月戌律位  神仙調子  また  無射といふ    十一

   十月亥呂位  上無調子  また  應鍾といふ    十二


右十二調子は萬物の内に含みてあらわれざると雖も動物の声をはじめとして礦物植物にも、水中にも、土中にも、器物にも都て形相ある物には必ず具備す故に緣にふれて必ず外に發す、唯形色無きが故に一般の人に氣つかざるのみなり、然れども人の師表になる者は必ず心得おくべき事なり、器物を製しまた萬物の交易爲すには是れを數と共に考へ仕用すべきものなりまた五音には自ら無形の性相備はる能く考慮あるべし人類の發す五音に、音原たり常に發声音律に依って各人の性格も体質も略推察できるさんこうのため音原の次第左に記す


音原の次第

宮音  音原脾臓より起る

    慈悲の質あり、發起の氣あり、靜寂の氣あり、未生の質あり、鈍感の氣あり、

商音  音原肺より起る

    大悟の氣あり、休止の氣あり、衰退の氣あり、成就の氣あり、感動の氣あり、

角音  音原肝臓より起る

    發声の氣あり、漸進の氣あり、和合の氣あり、養成の氣あり

微音  音原心臓より起る

    發達の氣あり、盛壯の氣あり、才能の氣あり、総明の氣あり、殺害の氣あり、

羽音  音原心臓より起る

    知謀の氣あり、成就の氣あり、感動の氣あり、停留の氣あり、愚痴の氣あり


如是音相ありと雖も、音相に形色あらざる故に留意する人稀なり。一喝の發聲にて殺倒し、一聲の慈悲

能く人命を救護す。是れ皆音性の作用なり。都て一物を製すれば數に倚て形像調ひ、音は自然に其中

に備はる。故に寶器を製するには必ず數と音とを選擇すべき事肝要なり。人の初めて名附くるに亦是に順ずべきなり。先づ前の体用相應の卷と養の巻の五行所囑の干支六十年の氣運に倚て生年月日時の四つの受性を考へ而して比數と音を選みて名を附くべし。人類を初め萬物一代の命數の長短。用途の死活。また人一代の運氣は生命に倚る事多し。人出生の時に倚って受持す數に、幸不幸の運勢略ぼ定まる。然るに名づくる姓名の字音に倚って多少の變化を起す故に薄運なる性徳の者も、字音に依て助くる事あり能く考ふ可き事なり。

また五十音配列の文字に、五音の縦横相通ずるものなり參考のため左に記


  開合       開      開合     開

 開 阿イヤ・ウワ  伊イイ・ウイ 宇イユ・ウワ 江イエ・ウエ  遠イヨ・ウオ

 五 加キヤ・クワ  幾キイ・クイ 久キユ・クウ 計ケヱ・クウ  巳キヨ・クオ

 音 左シヤ・スワ  之シヤ・スワ 須シユ・スウ 世シエ・スエ  曾シヨ・スオ

 縦 多チヤ・ツワ  知チイ・ツイ 津チユ・ツウ 天チエ・ツエ  土チヨ・ツオ

 相 奈ニヤ・ヌワ  二ニイ・ヌイ 奴ニヌ・ヌウ 禰ニエ・ヌエ  乃ニヨ・ヌオ

 通 波ヒヤ・フう  比ヒイ・フイ 不ヒユ・フウ 邊ヒエ・フエ  保ヒヨ・フオ

 圖 未ミヤ・ムワ  美ミイ・ムイ 無ミユ・ムウ 女ミエ・ムエ  毛ミヨ・ムオ

   也ヰヤ・ユワ  爲ヰイ・ユイ 油ヰユ・ユウ 惠ヰエ・ユエ  與ヰヨ・ユオ

   良リヤ・ルワ  利リイ・ルイ 留リユ・ルウ 禮リエ・ルエ  呂リヨ・ルオ

   和イヤ・ウワ  伊リイ・ウウ 宇リユ・ウウ 江イニ・ウニ  於イヨ・ウオ


今月は此所までにしておきます。

来月は「華道玄解」はいよいよ最後の項目に入ります。

「伝書規矩の巻参考資料」から『寶器 規矩之由来』『七種寶器之由来』に進みます。この項目は、いけばなの基礎ともいうべき内容です。花会では必ず目にする七種ではありますが、意味を知って花材を選び挿ける方は少ないのではないでしょうか。仮にも宝器とされていますので、その内容を知って頂きたいと思います。


花は心、種は態(わざ)。

花を知ることをこの道の奥義といい、種となる能芸の数々を鍛錬し尽くし、工夫を極めてこそ花を獲得できるとする。能楽師世阿弥の「花の段」という条があります。


能を尽くし、工夫を極めて後、此の花の失せぬ所をば知るべし。この物数を極める、すなわち花の種なるべし。されば花を知らんと思はば、まづ種を知るべし、花は心 種は態なるべし」 


むやみやたらに目に見える花ばかり追いかけ、内に秘めた花の心を覗き見ようとしない挿花家は、立派ないけばな家であるかもしれませんが、単にビジュアルデザインを求めているに過ぎないのではないでしょうか。

目に見えるデザインの内にはデザインする人の多くの思いが籠められています。その思いが大切で、挿花家は植物に対して心の籠もったデザインを心掛ける物です。200年以上もある伝統の花である「格花」、明治、大正、昭和を経て今尚進化し続けている「新花」「造形」、それぞれにおいて、仁と礼を大切にしたいものです。

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