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未生流東重甫

「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧34

2023年3月のコラム「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧34

 

いよいよ春を迎えます。私は春という言葉の響きが好きなのですが、これは明るい気持ちにさせてくれるのも理由の一つです。春は陰陽五行では木に属しますが、「華道玄解」の『養の巻参考資料』から、五行の所囑と解説の中の「木に屬する部類」に説明されている項目があります。


方に曰く東。星に曰く歳星。色に曰く青。気に曰く魂。卦に曰く震。人に曰く仁。時に曰く春。神に曰く龍。臓に曰く肝。味に曰く酸。数に曰く三 八。音に曰く角。


時に曰く春とは、「春は陽気進動し、草木新に芽を生じ、草木の類発生し、万物皆俱に気を動揺す。故に四時の中、春は木性と相通ず。」と説明されています。読むにつれて心が軽く浮き浮きした気分になるようです。春は何事においても進む時節でもあります。


三歩進んで二歩下がるといいますが、結局焦らずに前に進もうという事です。世上に惑わされず自分を生きるなら、心に春を抱いて生きたいものです。荀子(紀元前三世紀頃の思想家、儒学者)は「終身の楽しみありて 一日の憂いなし」と言っていますが、これは一生の目標があれば、日々の失敗など気にならなくなると訳すようです。


自分の目標が何かを見つけることは難しいことかも知れませんが、時々の目標があれば良いのではないかと思います。目標があるということは日々進歩することであり、つまりは前を向いて生きていれば必ず進歩しているという事です。


さて、読み進めています「華道玄解」の『妙空紫雲の卷參考資料』も最後の項目となります。今回は『神儒佛の道と華道』を読み進めたいと思います。


“神道とは禮祭の道。報恩の道にして日本の國教なり。故に佛道又は儒道に唱ふる神とは其意を異にする所あり我我が國教の神たちは皇祖の御尊靈にして我等臣民の分際として御神慮の是非を議論するは人道に違背するを以つて、是を謹まずんばあるべけらず。故に我等臣民の護持すべき神撙は御神靈に對する報恩禮祭を以て至當とす。故に華道に於てはその職に非ずして御神慮の教を伺ひ論ずる事御威徳尊厳のオソレアルに依り。是れを深く慎み控ゆる所なり。仍て唯敬神之意を遵守するに止まる。

儒道は人類の現業の法。故に治國の要道。濟家道法。自守の道法を主とす。故の教法皆現世の正道を示す。天文。地理。易學。文學。俱に倫理の教法。現在の要路なり。人生人の道學は何れも其根據一なりと雖も。此の教へは主として。人類一世の道徳を旨とするが故に。三世因果の理を表明せず。唯輕中暗暗裏に之れを示すのみ。表に標榜する教材皆現象物を以つてす。

佛道は三世因果の理を表明して。輪廻の道を教ふ。其要二種に分る。一つは現世の道法。一つは未来の要法なり。現世の道は現身の正法なり。未来の要法は現世淨化の道。現世の道法に二種の別あり、一つは世間法。一つは出生間法なり。世間法に二種あり。一つは報恩、一つは信心なり。出生間法に二種あり。一つは精進。一つは齊度なり。未来の要法に二種あり。一つは心淨化、一つは身淨化、心の淨化に二種の別あり一つは法師の果を求め、一つは人師の果を樂、身の淨化に二種あり、一つは業の解脱を求め、一つは施願を起す、故の若し佛教世間法と遠離せば空想に墮し、世に着すれば眞意を失ふ。心の安樂を旨として孔教せば國賊の法となり。若し身の安樂を主とすれば佛敵となりて道を失す。

唯救済報恩は佛法の本道なり。故に曰く、清淨法身汝の性、円満報身汝の智、千百億化身汝の行と。

華道は、世間亦非世間なり。表に三世法を標榜せざれども。裡に心清淨を旨とす、過去清淨なる故に。現世清淨なり、現行清淨なるに依て、未來亦清淨なり、過去の業を知らんと欲せば現在果を觀ずべし、來果を知らんと欲せば現行を見よ。故の華道は現世の正法なり、現身自然に隨順して正業を行ふ者、必ず未来淨化の因となる、若し華道歎樂のみを旨として行ヘば。壊滅の起因となる佛、儒、華の三道俱に信を旨として進む可きなり“


神は別格として、佛道、儒道、華道はそれぞれの道の教えも守り生きるもので、その意は三道とも同じで、その中心には「信」があります。陰陽五行の五常の中心は「信」に他ならないことを、教えてくれています。

「華道玄解」『養の巻参考資料』の五行の所囑から、土に属する部の中の「信」には次のように説かれています。


「信は五常の尤も解釈の範囲の広きもの也 各宗教に。信仰は其身を正しくする基とす。佛教に三寶(ほう)に帰依する事を解脱の道とす帰依は則信なり。佛法僧を信じる事なり…(以下略)」


現在、まさに必要な言葉である五常の意味を今一度考えなくては、華道と言いながら進む道をいささか間違えているような気がいたします。華を花としてだけ見ることは間違いではありませんが、我々華道を志した者にとって、ましてや華道を教える立場の人間にとっては、華を花として見るだけでは精一杯生きている花たちに失礼で有るような気がします。

次回から『規矩の巻参考資料』を読み進めていきます。

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