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  • 未生流東重甫

「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧29

「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧29 2022年9月のコラム

 本格的な秋の到来を心待ちにしていることと思います。夏に時間があるから旅行もしたい、今年は人混みを避けて田舎で過ごしてみようか等と考えている間に夏休みも過ぎ、今年も残り4分の1を残す時期に来ました。このようなことを思うと1年が過ぎる早さをひしひしと感じます。

心の持ち方次第で、目の前が明るくもなり暗くにもなるとは良く聞く言葉ですが、心は中々に自由に操ることが出来ないものです。

「心が明るく前向きであれば、暗い部屋の中からでも青空が見える様に爽快でる。心が暗く後向であれば、真っ昼間であっても悪魔や悪い鬼が出てくる」(菜根譚*(前集66項)より)

*:菜根譚(さいこんたん)儒教の思想に老荘・禅学の説を交えた哲学書。洪自誠著=明末の儒者

心に操られる様では決して良い結果は得られませんが、一喜一憂するのは悪いことばかりではありません。良いことに出会えば喜べば良いし、哀しいことに出会えば憂いて良いと思いますが、ここからが心の出番です。

「真剣に書物から学ぼうとする者は、感動のあまり、打ち震え、手で舞い足をふむように、小躍りするような気持ちで書物を読みこんで、真実を発見する必要がある」(菜根譚(前集215項)より)

心躍らされるような書物に出会えるのは数少ないです。時代相応に感じるものが違います、当然感じ方も違います。しかし、この菜根譚の「真実を発見する必要がある」という言葉には考えさせられます。

私はいけばな家の一人として、いけばな芸術や造形芸術、その他色々な伝統芸術であっても、感動する事が少ないのが残念に思うことがあります。何かを求める訳でもなく、素直に美しい者は美しいと感じるはずですが、真実を発見する必要があるところまではいっていません。自身の作品も満足のいく作品が無いに等しく、作ってしまえば過去の作品とさえ感じてしまいます。

時代の流れの中での言葉ではありますが、今の時代にもそぐうような言葉が多く感じられるこの「華道玄解」を記した荒木白鳳氏は、今の時代なら何を求められるのかお聞きしたいものです。

さて、今月は「養の巻參考資料」から『生物養の素因と助成物』『四時順逆の風足』『草木養の主要』を読み進めていきます。

『生物養の素因と助成物』

“生物養の素因は五行に實体なりと雖も。之を直接實用ならしむる者あり。五行に効用を助成する者は外にあり所謂。生物の生命を直接支配する者は。即風氣の二物也。風は陰陽の兩氣と相和して、生物の命を支持する者なり。風の作用は。實に良醫の如し。氣は藥の如し。醫藥は俱に相應して其効あるものなり。氣は寒暖の作用を起し。風は是を助成す。故に物を生じ。萬物の其体を固堅ならしむ。人是を推して、養の實用ならしむべきなり。

風は支持の氣に應じてその行動を爲す。其作用に依て生物或は生じ。又は滅し。或は旺盛となり。或は衰耗す。氣と順應する時は萬物を害す。地上の生物は皆如是。故に古への聖人も風邪を以て。交易の用具と認定す。

氣は空中に於て風と和して動し。地中にあって流通す是れを震とす。震は氣の和合して動揺するを名づ

く。故に震も風の如く實体ある事なし。両氣の作用に倚て起る無形のものなり。地中に存在する生物は。此の震に依て生育する故に儒教にて震風の二物を陽に屬して。交易の主用物と爲す。佛教にも風雷の二を化像する佛体あり。神道にも風雷の二物を護穀の神として祭る。雷は則震なり。“

『四時順逆の風足』

春は東より吹くを順風とす   西より吹くを逆風とす

夏は南より吹くを順風とす   北より吹くを逆風とす

秋は西より吹くを順風とす   東より吹くを逆風とす

冬は北より吹くを順風とす   南より吹くを逆風とす

季中は東北より吹を順風とす。 季は則土用なり四時に在り。

風足は東は緩急何れも無害。西は緩なるが良風急は害あり。南は緩を良しとし。急は害あり。北は緩害あり利急を良しとす。東北の風は多くものを養ふて良し。東南の風は常に多く吹きて良し。西南の風は七害三益あり。西北の風も七害三益あり。

西南風の時は能く物を腐らす。然れども此風暑中に多く故に涼氣ありて熱氣を緩和する事あり。故に七害三益と云ふ。西北の風は物を枯らす事多し。然れども万物質を固堅ならしむ故に七害三益と云ふ。本来は風に益害の質有に非ず氣の乗ずるに依て作用ある者也。』

『草木養の主要』

植物は陽に屬すと雖も亦其質に陰陽の別あり。養を爲すものは注意すべき事なり。其觀別の法は生い出づる時の氣候と。花の色と。藥の形状と。技の狀態に依て推察すべき也。偶数を具す花葉。白黄色の花。右旋狀。對生狀の枝。皆陰なり。奇数を具す花は。紅赤紫色の花。左旋狀。互生狀の枝は皆陽なり。故に一物に兩性を具するものあり。純陽純陰もあり。良く識別すべき事なり。動物には外相と。内相との別あり。内相は音声にして。識別し難けれ共植物は。内相なき故識別し易し。故に其質に随って養ふべきものなり。総て万物を養ふに雜食と。藥食ありと雖も。此卷に記す所の根本の原理を。了得する時は二物頼むにたらず。猶委しくは次の巻を開きて知るべき也。                 (終)

以上が「養の巻 參考資料」です。

未生流伝書においても、いけばな実習においても、まず活き活きとした花材を用いて活き活きとした花姿に整えます。そのために養(やしな)いを一番大切にしています。

伝書「草木養の巻」のあとがきに、次のように説かれています。

“挿花は自然に育生する草木を、伐り取って瓶中に移して形を整えるものであるから、草木を養うことは最も大切な事である。いたずらに草木の天寿を害うことは慎まねばならぬ。流祖は深くこれを思い、養の法を施して永く生命を保たしめることを務めとして、各種の薬方を考究し、古今の秘書を繙きて実験し、宇宙陰陽消長の真理に照して、この一巻を編した。…後略”(八世家元 肥原康甫著)

水持ちの良いものと悪いもの、水揚げが容易なものと難しいものなど、色々個性がありますが、その花材に適した養(やしな)いが必要です。そのためには、諸先生の教えと同時に、自分なりの研究も必要になります。花を大切にするのは、誰しも同じ事、美しく保って頂ければと思います。

次回は「妙空紫雲の卷參考資料」へと進みます。

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