「華道玄解」荒木白鳳著 閲覧21 2021年12月のコラム
すっかり京都の錦秋は盛りを過ぎましたが、私はこの時期の景色も京都らしく感じています。四季折々の美を感じつつも、毎年のことではありますが、今年1年がいつの間にか過ぎていく気がいたします。
このコラムも昨年から続いてではありますが、「華道玄解」閲覧も21回目を数えることになりました。時代背景を考えると少し理解しがたい所もありますが、私自身学ぶことも多くあり、読み進むことが楽しみでもあります。
一度に多くを紹介することが出来ないので、21回を数えても全文の60%程ですが、内容としては「未生流伝書三才」、「体用相應」、「原一旋轉」と続き、現在は「草木養いの巻」に基づいての説文に進んでいます。原文を閲覧していると、難しい言葉ではありますが、少しずつでも感じとれる様に思います。目が慣れる、耳が慣れるとも言いますが、ささやかな望みを抱いて読み進めているところです。私自身、この年になって、若いときには考えもしなかった事を、時勢に任せ学ぶことになりましたが、それと同時に佐藤一斎の「言志晩録」にある次の言葉が思い浮かびます。
「少(わか)くして学べば 壮にして為すあり 壮にして学べば 老いて衰へず 老いて学べば死して朽ちず」
今更自身の過去を悔いてもしようがない、今を生きる糧があることに喜びを感じます。このような思いで、コロナ禍という制限がある毎日が楽しく過ごせる幸せに『感謝』です。
さて、未生流伝書「草木養之巻」の初めの項に『養第一の心得と伝』として、次のように説かれています。
“諸(モロモロ)の草木に養を施さん欲すれば、先ず四季寒暖の移り便(カワ)り、陰陽消長するの季候、かつ風雨霜氷の毒となり薬となるの道理を、委しく弁えざるべからず。然して寒暖の両氣五行をなす、所謂木火土金水なり。”
これが華道玄解ではどのように説かれているのか楽しみです。
華道玄解では五行の木火土金水それぞれの司るところを説明しています。
前回は『五行の所囑と解説』とその中から『木に屬する部類』を読み進めました。
今月は『火に属する部』を読み進めます。
「火に屬する部」
方に曰く南
南は極陽の方にして火の生ずる處なり火の本宮とす。火は陽の極なり。故に南方を火の位置とす
星に曰く熒惑(けいわく)
熒惑は大星の名なり。六十一日にて二十八宿の一宿を過ぎて、百四十日に一周天すると謂う。此星午に旺なりと云ふ俗に災星と云ひ明かり盛んなれば凶なりといふ
色に曰く赤
赤は火の本色なり極陽の色なり南は火の本位なるが故に赤色を南火に屬す、此色極陽の色なりと雖も衰耗の氣を含む
氣に曰く神
神は五氣中に於て自在に明動する魂なりと云ふ。神は自在の意なり。火の性鮮明を主とす神は自在に動じて理非を鮮明に分つ故神と云ふ
卦に曰く離
離は八卦の火象なり。離は是れ神なり麗なり故に麗飾の意なり、正しき意あり。聰明の質あり、急進の意あり、過失の意あり、離散の意あり人に配して中女の位なり
人に曰く禮
禮は五常の道に正しき道なり。人倫の道に禮正しく行はるれば必ず國治り家睦じく、人柔和なり禮は溫情より生ず、溫は火に属すなり
時に曰く夏
四時夏は火に屬す氣熱して万物盛んとなる。夏は。午の月なり午は夏氣の伸する處。則盛夏の候なり
神に曰く朱雀
朱雀は四神の中。南方の守護神なり。南は火也故に火に屬す
臓に曰く心
五臓の中。心は火に屬す。心の字火を倒したる象と云ふ、神を藏する(かくする)處。生の本神なりと云ふ情は喜甚だしく喜べば。心を傷る(やぶる)とあり
味に曰く苦
五味の中に苦は火に屬す。食物。火を過せば味苦しと云ふ
数に曰く二七
二は火の生数則丙の数。七は火の成数にて丁(ひのと)の數なり
音に曰く徴(ちょう)
徴は五十音のナ行、タ行、ラ行則タチツテト。ナニヌネノ。ラリルレロ。の音にして舌の觸れて發する音此音に才氣を含む
以上、『火』に属する部を紹介しました。なお、明らかに印刷の間違いである文字は訂正しています。
来月は五行で云う、ものの中心である「土に屬す部」に進みます。来月は、もう2022年です。来年も、世情がどうであれ健やかな日々を送れますように。
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